「いいあせかこう静の子」の育成を目指して

                                   境町立静小学校長 倉持 博


 本校は,今年で121年目を迎える。戦後の新教育運動が盛んに行われていた昭和23年〜26年頃,粂正三校長が梅根悟氏(後に和光大学初代学長)の指導を受け,静プラン(単元学習)を展開した学校としても知られている。その当時の教育計画が残っているが,校長をはじめ教職員の教育に懸ける情熱がいっぱい詰まっており,現在の教育活動を実践していく上で大変参考になる。詳細については紙面の都合上述べることはできないが,特に「われわれの心がけ十箇条」は,現在でも本校教職員の教育信条として引き継がれている。


1 愛の満ちた学校にしたい。「慈愛,敬愛,友愛」 教育は魂と魂の触れ合いである。          
2 旺盛な研究心を持ち努力したい。 進みつつある教師のみが人を教える権利がある。        
3 生活即教育の場と考えたい。できるだけ子供と共にあれ。子どもの相談相手になれ。
4 倶現倶業の学校でありたい。わが行いを見よと言え。無言の教え(共学共遊,共働共励)
5 個性味のある学級経営でありたい。自由にものを言える間柄でなければならない。
6 協同,融和の姿でありたい。同僚の長所に学べ。笑い声の聞こえる職員室。
7 厳正なる勤務でありたい。教員屋になるなかれ。実践から生まれた理論こそ最良のもの。
8 仕事を追いたい。即時即決。責任完遂。「和」こそ能率を最大にあげる。
9 勤労を尊ぶ教育でありたい。わかる人よりやれる人。百の理屈より一つの実行。
10 充実した毎日の連続でありたい。一瞬一瞬が子供の人生にとって大切な唯一無二の機会。   



 さて,現在の静小学校は,児童数165人,職員数15人の小規模校である。昭和25年当時と比べると,児童数は約300人ほど減少しているが,伝統的によく働き,あいさつのできる児童が多い。朝7時50分頃までには全員が登校完了し,4年生から6年生までは朝の清掃ボランティア活動を行っている。また,欠席者が少ないこと,体力つくりに力を入れていること(茨城県より体力つくり優秀賞),統計グラフコンクールに数多く出品していること(茨城県より学校賞),伝統芸能を継承していること(茨城県無形文化財塚崎の獅子舞),体験活動を重視していること(2泊3日の宿泊学習・往路の約8キロは徒歩で,遺跡発掘体験,ユニバーサルデザインを提案する活動,フィールドワークを重視した環境学習など),学力の向上(特に国語力の向上)に力を入れていること,などが特色として挙げられる。
 保護者や地域の方々は,「おらが学校」という意識が強く,学校の教育活動に対して理解があり大変協力的である。
 このような中で,本校の目指す児童像「かしこく やさしく たくましく」に迫るために,児童,保護者,地域の方々にもわかりやすい「いいあせかこう(お)静の子」という合言葉(行動目標)を設定し,教育活動を展開している。そうすることで,学校,家庭,地域が連携・協力して児童像の実現を目指すことができると考えたからである。
 「いいあせかこう(お)」の一番目の「い」は「命を大切にする」ということ,二番目の「い」は「いじめをしない」ということ,「あ」は「挨拶をする」ということ,「せ」は「清掃をする」ということ,「か」は「学習をする」ということである。次の「こ」は「交通ルールを守る」ということ,「う」は「運動をする」ということ,「う」を「お」に置き換えたら「音楽に親しむ」ということになる。
 学習ではさらに「学習のはみがきよし」という合言葉を作り,児童も教師も意識して学習(指導)している。「は」は「発表する,話し合う」,「み」は「見る,観る」,「か」は「書く,描く」,「き」は「聞く,聴く,訊く」,「よ」は「読む」,「し」は「調べる,思考・判断」を表している。思考判断しながら「は・み・が・き・よ・し」の実践ができるようにと考えたのである。
 このように,「いいあせかこう(お)静の子」というだれにでもわかりやすい行動目標を設定したことで,児童は自ら,教師,保護者,地域の方々は協力して,「かしこく,やさしく,たくましい静の子」を目指すようになり,具体的な方法や施策を考え実践しようとする機運が高まっている。